かつて団地は、人々の憧れの場所であった。
先進的な暮らし、団地内に商店街や郵便局など、何から何まである便利さ。豊かな暮らしの急先鋒であった。
わたしたちが「団地は古臭い」と思うようになって数十年。団地は人と人のつながりを感じながら、シンプルな暮らしができる場所として生まれ変わりつつある。
UR花見川団地。
街や商店街の賑わいそのままに、様々な活性化への取組みによって、この「団地帝国」は人気の場所へ蘇ろうとしている。
さあ、そんな花見川団地の姿を見に行こう。
目次
【住所】千葉県千葉市花見川区
【交通】京成本線八千代台駅から京成バスで10分程度
【戸数】5,530戸(分譲棟である6・7街区を除く)
【間取】2DK~3DK/41㎡~59㎡
京成本線の八千代台駅からバスに揺られて10分。なだらかな丘陵地にニュータウンを思わせる巨大団地が姿を現す。これが、「花見川団地」である。
京成本線八千代台駅からバスでアクセスするのが一般的であるが、1街区の外れから総武線方面に抜けるバス路線もあり、沿線を選べるという意味で交通の便は悪くないといえる。
団地概要
団地巡り
穏やかな団地帝国。
昭和43年。ある団地の入居が開始された。その名は花見川団地。日本最大級の団地として計画され、入居者抽選でもかなりの倍率であったとか。高度経済成長期、まさに「夢と希望をもって団地に入居する住人」が大勢いたに違いない。この団地は日本陸軍の鉄道連隊跡地を中心とした5万m2もの広大な土地を造成して開発され、賃貸・分譲合わせて最盛期は7,000世帯以上が生活していたという。(余談であるが、日本陸軍鉄道第二連隊の演習線の一部は、現在の新京成線になっている。)
その後住居不足が解消され人々の都心回帰が進み、団地人気が下火になっていくにつれて団地の過疎化が進行する。一時はメディアのネガティブキャンペーンによって、入居率の低下に拍車がかかっていた。しかし近年の団地人気の再燃に加え、団地商店街を巻き込んだ無印良品リノベーションプロジェクト、地域のコミュニティーハブはなみがわLDK+プラス、千葉市の新婚者の入居支援など、矢継ぎ早に活性化施策を発表した。
これらが効果を発揮するのは先であろうが、今後さらなる盛り上がりをみせるであろう団地、それが花見川団地である。
給水塔
花のような意匠が特徴的な給水塔。各街区に設置されている。
12街区に分かれている。
団地を空から見守る給水塔。
花見川団地のトレードマーク、給水塔。各街区ごとに設置されており、団地のどこにいても給水塔が見えるほど。各給水塔それぞれは同時期に建設されたため、デザインはほぼ同一となっている。空に突き刺さるような高い給水塔と団地商店街、高層ポイント棟などとの組み合わせも秀逸といえる。
1〜5街区
団地外から1街区を眺める。近年は外装工事が進んでおり、シンプルながらも美しい意匠へ変化している。
2街区。青基調の1街区とは異なるカラーリングである。
2街区から3街区にかけて。外装工事が未着手の棟は、グレー基調の一般的なカラーだ。
高層ポイント棟。このタイプは、後に建設された多摩ニュータウンでも多く見られる。
最も団地の美しさを感じることができる場所。
3Kから3DKまであらゆる間取りの棟が立ち並び、居住区の中心となっている1・3〜5街区。近年は外装工事が進んでおり、様々な色をした低層棟がいたるところで見ることができる。階段室アクセス型の低層棟(一般的に団地と聞いて想像する形)がメインで、一部2街区に高層ポイント棟がある配置である。低層棟は、階段室が5室あるものから1室のみのこじんまりタイプまで様々である。中央部の2街区の一部はは花見川団地商店街があるなど地区センター的な街区となっており、こちらも賑わいを見せている。(後述)
8・9街区
8・9街区をのぞむ。
グレーベースの配色。
規則正しく窓が並ぶさまは圧巻だ。
9-26号棟。
高層ポイント棟が、団地の海に花を添える。
団地商店街にほど近い8・9街区は、低層棟と高層棟が入り混じる配棟(棟の並べ方)になっている。高層ポイント棟ともいわれるこの棟は、近隣にある常盤平団地のトレードマークであるスターハウスの発展形ともいえる。この形態の住棟は、のちの多摩ニュータウンでも多く見られ、団地建築の発展にも大きな貢献をしている。
6・7街区(分譲)
7街区を一望する。
7-8号棟。焼却炉の煙突が残る、古いタイプ。
老人室を備え、バリアフリー配慮型の48号棟。
北側に位置する4号棟は、階段室を中心にコの字型になっている変則型。
圧巻の住棟たち。
6・7街区は分譲エリア。低層棟が幾重にも並ぶさまは圧巻である。余談であるが、この時期の配棟は昭和37年に入居開始となった草加松原団地がモチーフとなっているようで、後年開発された多摩ニュータウン永山団地などにも生かされている。分譲団地は妻側にタイルが貼られていたり少し意匠的なイメージがあるが、花見川団地のそれは分譲団地のハシリであったこともあり、外観はそう大差がない。
団地商店街
今なお栄える、花見川団地商店街。
橋を渡った反対側には花屋や病院、郵便局が並ぶ。
今なお栄える、古き良き団地商店街。
2街区近辺は幼稚園や公園、図書館、遊歩道を挟んで郵便局と、団地のセンター機能が集約されている。その中でも中心となっているのが花見川団地商店街。スーパー2店舗、専門店33店舗というかなり大規模な団地商店街で、永らく営業している老舗店舗や近年入居したお洒落な店、様々な店舗が軒を連ねている。
ちなみにだが、この花見川団地商店街のWebサイトが大変かわいいのでぜひ見てほしい。各店舗の紹介や見どころがわかりやすく掲載されている上、ブログもしっかり更新されており、花見川団地振興組合の熱意を感じることができる。
Danchi Gourmet
団地グルメ
肉のカンダ
そんな花見川団地商店街を歩いていると、焼き鳥のいい匂いが.... 匂いの方向を見ると、精肉店の前に焼き鳥の屋台が出ているではないか。これは行くしかない!と、ももタレとつくねの串を注文。少し待つと、熱々の焼き鳥たちとご対面できた。これがたまらなく美味い!もも串は醤油ベースの甘ダレが素朴な味付けで身はプリプリ、つくねはくどくない優しい味わい。幼少期からこの団地で育ってきた人たちが羨ましい。公園で遊び疲れた少年時代、夕方の防災チャイムを聴きながらこの焼き鳥をつまみ、家に帰れるんだから。
所在地 :〒262-0046 千葉県千葉市花見川区花見川2-42-113
営業時間:7:00~19:00(水曜定休)
いかがであっただろうか。戦後、住宅公団最大規模を以って計画された花見川団地。
花見川団地入居開始の前年(昭和43年)には、日本の国民所得(GNP)が西ドイツを抜き、資本主義国として世界第2位となった。いざなぎ景気真っ只中で、団地人気は最高潮であったといえるだろう。
それから早数十年。団地は「古いもの」として人気をなくし、都心回帰が進んだ。しかしその中で、地域住民を大切にし日々の生活を潤いさせつづけた団地商店街、団地の再興を真剣に考え続けたUR(旧住宅公団)、若者を地域に呼びたい千葉市。それぞれが懸命に活動を続け、花見川団地はもう一度魅力的な街として復活を遂げようとしている。
復活の狼煙はあがった。この古豪復活劇を、私は見守り続けようと思う。
まとめ
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